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モリス商会の足跡

 

最近日本でも大人気のウィリアム・モリスですが、オックスフォード大学で同期だったエドワード・バーン=ジョーンズと共にラファエル前派の一人、ダンテ・ガブリエル・ロセッティとの邂逅を果たしたことで、彼の人生は大きく変わりました。

 

そもそも二人は聖職者を目指していましたが、ルーヴル美術館でラファエル前派の絵を見た時に「芸術家になろう!」と決め、モリスは建築家、バーン=ジョーンズは画家を目指すことにしました。

 

すぐにモリスは、学校を辞めてロセッティの門下に入ったバーン=ジョーンズの紹介でロセッティと知り合い、画家を目指すことにするのですが、3年ぐらいやりつつ、同時にデザイン業をはじめます。

 

 

という時に住んでいた家がこちら!!!!!

 

 

 

 

レッド・ライオン・スクエア。

感無量。

 

ただこの家はロセッティが飼っていたフクロウの汚れが結構酷かったらしいです。

 

ひとつ残念なのは、こうしてロセッティがモリスたちと交流を深めたこともラファエル前派解散の一因となっていることです。

まあでもハントの恋人に手を出した時点でもう何してもだめだったとは思うんですけどね!!!

 

さてここで、いつか書きたかった大人気のモリス、何がすごいの?というお話。

 

・アール・ヌーヴォーにも影響を与えた

・当時産業革命によって工業が発展したことにより、大量生産品が出回ったが、それに対して「日常のものにも芸術を忘れてはいけない」と、細かい手作業にこだわった工芸品を多く生み出した

・デザインは中世のものが元になっているが、当時デザイン界で考えられていた「平面的」というデザインではなく、中世のデザイン+立体的なデザインを取り入れた、「ゴシック・リヴァイヴァル」

・彼が愛した自然を取り入れた緻密なデザイン

・ラファエル前派も継承している

 

今や100均などでいとも簡単にモリスデザインのものに出会うことができますが、当時彼が生きていた時代は例えば壁紙の青色ひとつにしても、彼が壁紙製造所まで実際に赴いて、自分で納得のいく青色を出せるまで粘って、その色が決まったらその色から絶対に剥離しないように厳しく作っていたんだそうです。(なので、多分今のこの大量生産されたモリスグッズを見たら、モリスは嘆くんだろうな…とよく思いながら私もよくセリアでモリスグッズ買ってます。かわいいんだもの。)

 

そして1861年には同じレッド・ライオンスクエアの8番地で、モリス商会の前身となる「モリス&フォークナー商会」が設立され、ステンドグラスの製造などを主な注文として活動を開始します。

 

 

この、初期のモリス&フォークナー商会が引き受けた大仕事の一つが、こちら。

 

 

 

 

1867年のV&A美術館のダイニングルームの1室デザイン。

 

 

愚痴っていいですか。

 

この写真に写っているスープとパンのセット、これだけで日本円にすると¥3,600だったんです。

 

ていうか、主食を食べようと思ったら、絶対日本で食べた方が美味しいシャケの焼いたのとかが¥4,000ぐらいしてて、前菜しか頼めなかったんです。

 

今回の滞在ではこういう物価高・円安を見越して永谷園の麻婆春雨などを持ってきて極力外食を避けたのですが、ここのモリス・ルームでのご飯はずっと憧れていたことなので奮発してきました。

 

円安が憎い。

 

 

お部屋の他の箇所。

 

 

 

綺麗ですね。

 

まだ20代後半のモリスとバーン=ジョーンズががんばって作ったのかと感無量でした。

 

でも本当にスープは高すぎる。

 

 

それで、このV&A美術館は先のブログでも述べた通り、デザインの美術館なのでモリス商会のものが多く展示されていました。

 

 

 

この椅子、モリス商会が高くない値段で一般家庭向けに出した初めての商品なのですが、右側の椅子はなんとロセッティのデザインのもの。

 

 

 

バーン=ジョーンズデザインのピアノ。

 

 

先ほど写真にも載せたレッド・ライオン・スクエアに住んでいる時、モリスは後の妻となるジェーンと出会います。

 

しかし!!

 

美しかったジェーンは、当時エリザベス・シダル(ミレイ「オフィーリア」のモデル)と付き合ってたロセッティをも虜にしてしまいます。

 

ジェーンに惚れてしまったロセッティはその後うだうだうだうだうだうだうだうだシダルと付き合って、付き合い出してから10年の時を経て結婚。

 

しかしその後も忘れることができず、なんと二人はモリスの結婚後ずっと不倫関係にありました。

 

しかもすごいのが、モリスは多分それを知っていたのに、一切言及せず(そういう手紙なども残さず)、時には家に二人きりにさせてみたり、その状況が辛くて旅に出たりしています。

 

 

ロセッティはジェーンをモデルにたくさんの絵をが描いたのですが、中でも最も有名なもの。

 

 

プロセルピナ(テート美術館蔵)。

 

無理矢理な結婚をさせられて地獄と天国を行き来している女性・プロセルピナの絵です。

 

 

意味深!!!!!!!

 

さらに複雑なのは、モリスの盟友バーン=ジョーンズもマリア・ザンバコというモデルと不倫関係にありました。

 

そこで、お互いの伴侶が不倫しあっているもの同士のあれなのか、モリスはバーン=ジョーンズの妻ジョージアナと「親しく」なりました。

これが、どこまで「親しく」なのかはわかっていませんが、モリスがジョージアナに「結婚したい」と書いて送って、ジョージアナが「ごめんなさい」している手紙はあるそうです。

 

 

 

最後に、モリスの唯一の完成している油彩画作品。

 

 

「美しきイゾルデ」(テート美術館蔵)

 

モデルはジェーン・モリス。

 

この絵の中に描かれている絨毯や他の布地からもモリスのデザインが見て取れますね。

 

 

長いのに読んでくださってありがとうございました!