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徒然なるままに更新しております。

レクイエム

2022.6.10

あと4日で、構想2年、練習・編曲に半年以上かけて取り組んできたオール・フォーレ・プログラムの本番となります。
あんなに先のことだと思っていたのに!
今日は、コンサート前の予備知識として少しだけレクイエムについてお話したいと思います。
まず、キリスト教は大きく分けてカトリックとプロテスタントの2つに分けられるのはご存知かと思いますが、この「レクイエム」というのはカトリックのミサになります。
「カトリックとプロテスタントってそんなに違うものなの?」と思ってしまいますが、例えば絵をひとつ取ってご説明させてください。

フランスの画家ドラローシュの「ジェーン・グレイの処刑」。
これは史実を元に描かれている絵なのですが、チューダー朝の王位に即位したものの、9日間の在位ののち16歳で処刑されて亡くなった女性ジェーン・グレイが描かれています。
ジェーンはプロテスタント。
そして支持者を集めて彼女から王位を奪還して、処刑をしたメアリー・チューダーがカトリック。
できればジェーンを処刑したくなかったメアリーは再三、「もしもカトリックに改宗するのだったら処刑はしない」と条件を出すのですが、結局ジェーンはめちゃくちゃ敬虔なプロテスタントだった為、それを拒否して処刑となりました。
その後メアリー(彼女も敬虔なカトリック)は、「ブラッディー・メアリー」という怖いあだ名までつくほど、プロテスタントの人々を迫害・処刑しました。
ちなみにカクテルのブラッディー・メアリーはここから来ています。
色々な宗派が混在している日本では考えられないことですが、こういうことに発展するぐらいこの2つの宗派の差というのは大きいようです。
ということからもわかる通り、大雑把に「キリスト教の行事」と捉えることができないのがレクイエムです。
カトリックのミサです。プロテスタントだと「ミサ」ではなく「礼拝」というようです。
今回のフォーレのレクイエムですが、
1)イントロダクション〜キリエ(入祭唱〜憐れみの讃歌)
2)オッフェルトリウム(パンとぶどう酒の奉献)
3)サンクトゥス(聖なるかな)
4)ピエ・イエズ(慈悲深いイエスよ)
5)アニュス・デイ(神の子羊)
までがミサの中で執り行われるもの、以降の2つ
6)リベラ・メ(我を赦し給え)
7)イン・パラディスム(楽園にて)
はミサが終わった後、棺が運ばれている時、埋葬の時のものとなります。
レクイエムでは必須項目と思われる「怒りの日(神の審判がくだる時)」が入っていないことや、ミサの後のものが2つも入っていることから、より安らかに、魂を天国へと送り出すような意味合いをフォーレは強めたかったのかなと思っています。

それで、私も知らなかったのですが、色々今回学んだことの一つで、欧米ではよほど「これはコンサートです!」という場合以外、レクイエム終了後に拍手はしないそうなのです。
今回、レクイエムをプログラムに入れた時はその予兆すらなかったのですが、2月以降は皆様もご存知の通り、毎日ウクライナの戦争のニュースが流れています。
ニュースを見ながら、こんな情勢で、かたや私は何もできずに悩み、それでも練習しないわけにはいかず、そういう気持ちの中で毎日レクイエムと向き合ってきました。
こういう気持ちの中迎える本番なので、どうしても私自身「レクイエムです楽しく聴いてください!」という気持ちになれず、色々なことを考え、向き合いながら演奏すると思います。
ですので、当日のプログラムにも印刷させて頂き、アナウンスも流させて頂きますが、どうぞ終了後は拍手はご遠慮ください。
アンコールは気持ちを切り替えてお送りいたしますので、もしその時に拍手をいただけましたら幸いです!
それではホールでお待ちしております!

舞台での緊張

2022.1.19

今日は、「緊張」を話題にしてみようと思います。
演奏家には、緊張する人と、やや緊張する人、あまり緊張せずに楽しく弾けてしまう人がいると思います。
「緊張する人」で、有名な音楽家とそのエピソードをご紹介します。

・シベリウス(作曲家)
ヴァイオリンを音大で専攻していたが、元来極度のあがり症で、ある試験の時に舞台に上がったは良いが、弾く音を思い出せずに一音も弾かずに降段。以降演奏家の道は向かないと諦めて作曲家に。

・ホロヴィッツ(ピアニスト)
本番前は舞台袖で震えるほど緊張。舞台を指差して「私の世界で最も孤独な場所だ」と言った。

・ゴドフスキー(ピアニスト/作曲家)
とにかくあがり症で、舞台の上では本来の実力を発揮できなかったとか。

・アルゲリッチ(ピアニスト)
本番前になると舞台袖で「熱があって弾けないかも」などと言い出し、娘からは「見ててかわいそうになる」と言われるぐらい緊張する。

・カザルス(チェロ)
以下カザルスの言葉
「演奏前のあの恐ろしい緊張感を克服できたことは一度もない。あれは拷問だ。毎回が試練だ。人前で演奏すると考えただけでもぞっとする。」

……こんな偉大な方たちも緊張に苦しめられていたのかとほっとします。

私ですか?
ハープを人前で弾くようになって早20年、慣れるどころか年々緊張するようになってます。
本番の前日は食事も喉を通りません。(なのに体重は落ちません。)
本番でも、昔は1曲目を弾くと途中から緊張せずに弾けていたのですが、最近は最初から最後までずっと緊張してます。
ちなみに、コンサートで私が指を弦に準備したのに、それを外して手をグーパーしてる時は、指が震えて弦が掴めなかった時です。
今までたくさん「上がらないで演奏するには」のような記事も読んだのですが、
「家で練習する時、コンサートホールで弾いてると想像して弾いてみましょう」→めっちゃここ部屋やが
「ホールで弾く時は、部屋にいることを想像してみましょう」→いや、めっちゃ人ここにおるが
と、全く自分のイマジネーションを発揮することができません。
かと思うと、本番で大失敗している自分の姿のイマジネーションなどはびっくりするほど容易にできてしまうので困ります。
こんな私が辿り着いたあがり症対策は、とにかく何があっても勝手に体と指は動いていけるまで練習する作戦です。
今まで何度これに助けられたでしょうか。
あとは本番で、いくら緊張していてもとにかく集中すれば、弾いてて怖いと思ったことが起きた時でも色々考えて対処できるかなと、最近は考えています。
でも、こんななのに、演奏するのはすごく好きなんです。
緊張と戦いながら、これからもハープに取り組んでいきたいと思います。

印象派・光の系譜 三菱一号館美術館

2021.12.31

あっという間に年末になってしまいました。
昨日、今年の美術館納めで三菱一号館美術館に行ってきました。
今やっている「印象派・光の系譜」展は3回目だったのですが、昨日が一番混んでいました…!
それまでル・アーヴルで似顔絵を書いていたモネを見出した画家ブーダン(同じ町で元々額縁屋さんを営んでいた!)や、印象派の画家たちが尊敬していたクールベやコローの絵から始まり、モネやピサロ、ルノワールなど印象派を代表する画家たちの絵、点描で絵を描いた新印象派のシニャック、レイセルベルへ、ポスト印象派のゴッホ、そしてゴーガンから始まるナビ派の画家たち、今話題のレッサー・ユリィという画家たちが展示されています。
アートコンサートでもお話しさせて頂いたのですが、モネが「印象・日の出」を発表したことで、批評家ルイ・ルロワから批判的な意味を込められて付けられたのが「印象派」という言葉でした。
この「印象・日の出」はイギリスの画家ターナーの「ノラム城 日の出」に大いに影響を受けたと言われており、「系譜」ということでターナーの作品が何か出てきたら嬉しかったのですが、日本はターナー作品が少ないからなかなか難しいですね…!
話を元に戻し、この展覧会のお目当がピサロの「エラニーの日没」なんです。

エラニーはピサロが最晩年に住んだ町なのですが、実は絵画研究家の荒井喜矩氏から興味深い話を聞いて俄然興味が出た絵なのです。
・1890年に描かれた
・太陽が描かれている
・黄色がピサロにしては特殊
どういうことかというと、ゴッホを追悼している可能性があるそう!
ピサロはかなり色んな人と親交があってすごく慕われていた画家なのですが、ゴッホとも親交がありました。
そのゴッホの没年が1890年。
そしてゴッホがモチーフとしてとても好んだものの一つが太陽で、好んだ色が黄色でした。
ピサロが太陽を描いた作品はあるにはあるものの、あそこまでど真ん中に描かれたものはないそうで、そういうことをお伺いした後にこの絵を見ると、とても胸打つものがあります。
今年は、ロマン主義や印象主義、象徴主義の3つについてものすごく考え、調べていた1年なのですが、印象主義がこれだけ人気になる一つの理由は、ロマン主義絵画以前のような、知識がなくても「綺麗!」というストレートな気持ちで楽しめることなのかなと思っています。
光の変化、その一瞬の美しさを絵に残した印象主義絵画ですが、こういう裏を知るとなお楽しめる絵画もきっとたくさんあると思うので、これからも色々調べていきたいなと思いました。

それでは良いお年をお迎えくださいませ!

ペダルハープとクロマティックハープ

2021.11.24.

今日は、11月30日(火)に焼津文化会館であるコンサートで弾かせていただく曲、ラヴェルの「序奏とアレグロ(1905年作)」のお話と、それに纏わるハープのお話をしたいと思います。
この曲ができた経緯ですが、ラヴェルが当時作曲コンクールの最高峰であった「ローマ大賞」で一度も優勝できず、年齢的にこれが最後…と受けた回で(意図的に)落とされ、当時のコンセルヴァトワールの院長デュボワが辞職するまでに至ったいわゆる「ラヴェル事件」で落ち込んだ時期に書かれた曲です。
落ち込むラヴェルを友人たちが慰めようと船旅に誘ったのですが、その旅の間近に当時ハープも製作していたエラール社からこの曲の依頼が来たので、ラヴェル曰く「1週間と不眠の三晩」という超短期間で仕上げた作品です。
超余談ですが、ラヴェルは大変なオシャレさんだったので、旅行にすらワイシャツ12着、ネクタイ57本、パジャマ20着持って行っていたそうです。2泊3日ぐらいまでだったらなんとかシャツ1枚で済まそうとする私とは大違いです。
この曲はエラール社が当時製作していた、現在のハープと同じ形であるダブル・アクション・ペダルハープと呼ばれる、足でペダルを踏んだり上げたりすることで音を♯にしたり♭にする機構のハープのために書かれています。
編成はハープ+弦楽四重奏+フルート、クラリネットで、初演のハーピストはフランスの作曲家ダマーズの母、名手ミシュリーヌ・カーン。(ちなみにフルートはフィリップ・ゴーベール!)
ではなぜエラールがラヴェルに依頼したかというと、話は遡る事この1年前。
同じくフランスの作曲家ドビュッシーが、プレイエル社から「クロマティック・ハープ」を普及するために、この楽器用の曲を書いて欲しいとの依頼を受け、ハープ+弦楽四重奏+フルート、クラリネットの編成で「神聖な舞曲と世俗的な舞曲」という2部構成の曲を書きました。
このクロマティックハープというのが、

こちら。
ピアノでいうところの「黒鍵」と「白鍵」にあたる弦がそれぞれ交差して張られています。
そうなんです、弾くのめちゃくちゃ難しいです。
そういうわけで、このハープはもう絶滅してしまいました(16世紀頃から存在はしていたようです)。
話を戻し、
このことを知ったプレイエル社が「うちのダブルアクションペダルハープも宣伝しなきゃ!」ということで、当時のパリ人たちの間でもすっかり「ラヴェルvsドビュッシー」の構図が出来上がっていたこともあり、ラヴェルに依頼をしました。
ハープというのは、残念ながら曲の数が非常に少なく、特にこういった大作曲家が残した曲は本当に少ないので、私としてはこうやって委嘱して曲ができる機会を作ってくださったエラール社とプレイエル社に感謝の念しかありません。
両方とも2部構成で同じ編成なので、いつか1つのコンサートで両方ともやってみたいなと夢見ています。

アートコンサート

2021.11.3.

こんにちは、皆様お元気でしょうか?
私は一昨日クリスマスツリーを出しました。

さて、今週末は遂にアートコンサートです。
できあがって送られてきたプログラム冊子を見たところ、第2部のタイトルが「印象主義主義と象徴主義主義」になってしまっていてショックを受けていることはさて置き、
お話したいことややりたいことがありすぎるのですが、なんとか今回は2時間にまとめ、ロマン主義、印象主義、象徴主義の3パートをご紹介させて頂きます。
コンサートは下記のようになっています!(「」内は演奏曲/Vc.は伊藤悠貴さんとの共演です)

第1部 ロマン主義から印象主義
(1)ドラクロワがロマン派となったわけは?
フランス・ロマン派絵画の代表ドラクロワとジェリコー、ショパンのお話と「ショパン/マズルカop.24-1」

(2)ユゴーと画家の意外な関係
フランス文豪ユゴーのお話と「ラフマニノフ/女たちはこたえた」(Vc.)

(3)実は絵画に大きな影響を与えまくっていたゲーテ!
ドイツロマン派の作曲家シューマン、詩人ハイネ、文豪ゲーテ、画家フリードリヒのお話と「シューマン/蓮の葉」(Vc.)

(4)奥さん大好きコンスタブル!
イギリス画家コンスタブルのお話と「アイアランド/バガテル」(Vc.)

(5)ちょっと頭おかしい…?詩人シェリー
イギリス画家ターナーとイギリス詩人シェリーのお話と「ボウエン/ハープのためのアラベスク」

(6)ドビュッシーって結局何者?
ロマン派から印象派への流れとフランス作曲家ドビュッシーのお話と「ドビュッシー/アラベスク第一番」

第2部 印象主義主義と象徴主義主義
(7)印象派で日本に影響されなかった人はいない?
絵画研究家をお招きして印象派とジャポニスムのお話

(8)モネって本当はどんな人?
フランス印象派の画家モネと、フランスの作曲家セヴラック、イギリスの詩人ブラウニングのお話と「セヴラック/休暇の日々より『ロマンチックなワルツ』」

(9)名前はあまり知られていないのに、実は超有名人だったダンディ・モンテスキュー
フランスの作曲家フォーレ、詩人モンテスキュー、画家ホイッスラー、イギリスの作家ワイルドのお話と「フォーレ/パヴァーヌ」

(10)大事件にまで発展したボーイズ・ラブ
イギリス・ラファエル前派の画家ハント、フランスの詩人ヴェルレーヌのお話と「フォーレ/塔の中の王妃」

(11)偉人=人格者ではない
西洋における「菊」の話、フランスの画家ドガ、ルノワール、オランダの画家ゴッホ、イタリアの作曲家プッチーニのお話と「プッチーニ/菊」

(12)あまり知られていない?ルドンと音楽の関係
アメリカの象徴派詩人ポーと、フランス象徴派の画家ルドン、イギリスで活躍した挿絵画家デュラックのお話と「ラフマニノフ/前奏曲「鐘」op.3-2

もし2時間少し過ぎたらすみません…!
そして文字面だけ見ると堅苦しく見えますが、この天才たちのとんでもない話などもご紹介させて頂きますので、あまり気張らないでいらしてください。
いやしかし、色々な本や文献を読み漁っているのですが、本当にまだまだ勉強しなければいけないことが多すぎるなと実感しています。
音楽と文学と絵画って色んなところで影響し合って絡み合っているので、そういったことを今後も発信していけたらいいなと思っています。
またこのアートコンサートですが、大変過ぎるので年1の企画として毎年取り組んでいこうと思っています。
来年は「象徴派」と心に決めています。
では良い文化の日をお過ごしください!

公式サイトが新しくなりました

2021.9.25.

この度新しく公式サイトを作りました!
今までのものはしばらくしましたら閉鎖いたしますので、恐れ入りますがブックマークのご変更等お願い致します。
また、ブログもたまにこちらに書いて行こうと思っておりますので、たまにのぞいていただけますと幸いです。
どうぞ今後ともよろしくお願い致します!